大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和46年(く)163号 決定

被告人 塚田好則

〔抄 録〕

そこで原決定の右判断の当否につき審按するに、抑刑事訴訟法第八九条第三号に「被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮にあたる罪を犯したものであるとき」とある「常習」とは当該犯行と罪質を同じくする犯罪が習癖として反覆して行なわれる場合をいうのであつて、被告人の本件犯行についてこれを考えると、被告人が短期間内に同種犯罪を反覆累行した事実は前記のとおりであるけれども、本件犯罪の性質、犯行の動機、態様、被告人の環境、被告人に同種の前科の無いことその他諸般の事情を一切斟酌しても被告人が前記犯罪を反覆する習性があるものとは到底認められず、原決定が被告人の本件犯行に常習性ありと認めたことは違法たるを免れない。

然しながら、記録により本件審理の経過を考えてみると、被告人は勾留の儘前記の日時に起訴されたものであるが、本件審理は昭和四六年七月一五日に第一回公判期日が開かれ、被告人は本件詐欺の犯行を否認したため同年同月二九日の第二回公判期日に先ず前記肥後基一が証人として喚問され、同年八月五日の第三回公判期日に右基一の息子信元が証人として喚問され、右両名によつて本件各犯行に至る迄の経緯が立証されたとはいえ、被害者らの証人尋問はいずれも同年九月三日の第四回公判期日以降に持越されてその取調べが予定されていることが認められ、本件審理は未だ緒に着いたばかりであるから、現段階に於て被告人を釈放するときは被告人が被害者らに働きかけて自己に有利な証拠を作為する等罪証を隠滅する虞はあるものといわなければならない。

而して被告人は昭和四六年六月四日に勾留(理由は罪証隠滅と逃亡)され、同年八月一二日に勾留更新決定(理由は常習性と逃亡)が為されたものであつて、未だにその勾留が不当に長期に及んだということはできず、また本件については裁量による保釈を相当とする事由も認められない。

以上の次第であるから、原決定が本件保釈請求を却下した理由として被告人の本件犯罪に常習性ありと為した点において誤があつても、結局保釈を許すべからざるものとしてこれを却下したことは正当であるから、本件抗告は理由がない。

(八島 沼尻 中村)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!